1シナリオ 投稿者:影法師  投稿日:2019年01月14日(月)18時11分54秒
ゲームシナリオを描くうえで、参考にしてもらおうと立ち上げたスレです。
なので、このまま小説板で書き上げるかは未定です。
2投稿者:影法師  投稿日:2019年01月14日(月)18時12分08秒
 まっさきに飛び込んできたのは、鬱蒼とした茂みと、木々の隙間からこぼれおちる夕焼け色の光。
 そこは見知らぬ場所だった。
 なぜ、こんなところにいるのだろうと、ぼんやりとした思考の中で思った。
 周囲をさらに見渡し、状況を確認しようと体を動かそうと試みる。

 しかし体が言うことを聞かない。今見える景色を見つめることしかできない。
 ここはどこで、なぜこんなことになっているのか。
 疑問符が、ただただ頭の中を駆け巡る。
 ふと、どこか遠くで誰かの叫ぶ声がした。声は一人ではなく、複数である。
 助けを呼びたくても、声すら出せない。
 代わりに、心の中で何度も叫んだ。助けて。私はここにいる、と。

 どれくらいそうしていたかわからない。
 声や足音が徐々に近づいてくる。
 それとともに垣間見える姿に、ようやく来てくれたという安堵が胸を満たしていく。
 嬉しさが込み上げる中、意識は闇へと転じていた。
3投稿者:影法師  投稿日:2019年01月15日(火)21時22分12秒
 けれど声は止むことなく、何度も名前を呼びかける。早苗――と。

 しつように向けられる声に、早苗は否応なしに目を覚ました。

「早苗、起きなさい。遅刻するわよ!」

 そこでようやく、声の主が階下から向けられた母の声だと気がついた。
 先ほどの夢が冷めやらぬ中でベッドから体を起こし、机の上にある時計に目を向ける。
 七時半近くを表示している時計をぼんやりと見つめていたが、ようやく自分の置かれている状況を思い出し、慌ててベッドからはい出した。
 ハンガーにかけてある制服を急いで身にまとい、鞄を手に、足早に階段を下りていく。

「ちょっと、どうしてもっと早く起こしてくれなかったの!」

「何度も起こしたのよ。起きなかったのは自分じゃない」

「そうだけど!」

 早苗は自分の言葉が理不尽だとわかってはいたものの、当たらずにはいられなかった。
 けれど時間を考えると、これ以上文句を言うわけにもいかない。
 荒い足音を立てながら出ていこうとする早苗に、母はお見通しとでもいうように弁当箱を差し出した。

「はい、忘れ物。いってらっしゃい」

「ありがと!」

 こころよく弁当を受け取り、家を出ると、早苗は学校へ急ぐべく走り出した。
4投稿者:影法師  投稿日:2019年02月03日(日)18時16分00秒
 いつもの通学路を走れば、どうにか間に合うかどうかという時間帯だった。
 このまま行くことも考えたが、近道をするという選択肢が頭をよぎった。

 ただそのためには、神社を通り抜けなければならなかった。
 そこは古くからある神社で、他では見かけたことのない、井戸がある珍しい神社だった。
 昔から井戸から妖怪だの幽霊だのといった噂が絶えないためか、神社内で人を見かけたことはほとんどない。

 早苗も少々気味が悪いと感じていたため、判断に迷った。
 けれどそれも一瞬で、学校を遅刻してはいけないという思いが優先した。
5投稿者:影法師  投稿日:2019年02月11日(月)18時35分16秒
 決断すると、早苗は神社方面へと駆け出した。
 平日の通学時間帯だというのに、神社方面へと近づくたびに人通りは少なくなっていく。

 やがて神社にやってくると、井戸の近くになにかが横たわっているのを目の端に捉えた。
 なにかと目を向けると、人がうつぶせに倒れている。体つきはやや小柄で、細身だった。
 一瞬、なにかの事件に巻き込まれて放置された遺体だという思考が頭をよぎる。
 早苗は思わず背筋が凍り、その場に立ち尽くしてしまった。

 けれど冷静になって考えれば、よほどのことがない限り、そういう場面に遭遇することはない。

 どういった状況にせよ、このまま放っておけるはずもない。
 恐る恐る近づいて見ると、わずかに肩が上下している。
 息をしているという証拠だろう。
 それだけでも早苗は心底安堵した。
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