1追いかけてくる 投稿者:伊藤カホ  投稿日:2017年05月04日(木)16時44分35秒


「いやっ……!誰か……!誰かっ…」


少女は夢の中で、悪い鬼に追いかけられていた。

その鬼の正体はわからない。

ただわかるのはひとつだけ。


それは復讐の鬼、ということ。
2投稿者:伊藤カホ  投稿日:2017年05月04日(木)16時52分24秒

1

「つーかまえたっ!」


ある時、5人の小学生が鬼ごっこをしていた。


「あーあ……ほんと亜沙子は足が速いんだから」


そう言われ、亜沙子と呼ばれたその少女はニカッと笑い、「イエーイ」とピースサインを作った。


宮沢亜沙子、小6。

足がとても早く、リレーや徒競走ではいつも1位を取っている。


もちろん、鬼ごっこでも誰にも捕まったことはない。
3投稿者:伊藤カホ  投稿日:2017年05月04日(木)17時00分54秒

キーンコーンカーン……。


休み時間を終わらせるチャイムが鳴ってしまう。


「あー、もうこんな時間だ…」

「また鬼ごっこしようね、次こそは亜沙子から逃げきってやるんだから」

「ふっふっふ。逃げきれないよ?私の足の速さではね」


亜沙子はまたニカッと笑う。


「もー、亜沙子ったら生意気ー」


友達がそう言うと、どっと笑いが起きた。


「まあ、私から逃げられるのなんて100年早いよ」


亜沙子はドヤッとしながら言った。
4投稿者:伊藤カホ  投稿日:2017年05月04日(木)17時14分09秒

教室に入ると、まだ席に着かずに輪を作って話しているクラスメート達がいた。

クラスメート達の表情はやけに険しい。


「どうしたの?」


亜沙子はそのクラスメート達とも仲が良かったので、事情を聞くことにした。


「あ、亜沙子。……あのさ、今日さ…塚本さん休んだじゃん?」


塚本は、亜沙子達と同じクラスの女の子だ。

塚本は体が強く健康で、休むのは珍しいと亜沙子も思っていた。


亜沙子は軽く頷く。


「……塚本さん、眠ったまま起きてないんだって…」
5投稿者:伊藤カホ  投稿日:2017年05月04日(木)17時28分00秒

「……えっ?何それ…眠ったままって…」

「…うちらも詳しくはわからない。でも先生が職員室で話してるの聞いちゃったんだ…。
塚本さん本当は体調不良じゃなくて、何度起こしても起きないんだって…」


そんなこと知らなかった。

それは亜沙子と一緒に遊んでいた友達も同じだったのか、目を大きく開けて驚いていた。


「マジか……でも何で…」

「わかんない。…塚本さん、うなされてたんだって…」

「悪夢でも見たのかな?」

「うーん、わかんないけど、たぶん…」


そんなこんな話しているうちに、先生が教室に入ってきて、HRが始まってしまった___
6投稿者:伊藤カホ  投稿日:2017年05月07日(日)07時08分23秒

「おーい席着けー。HR始めるぞー」


担任の指示で、亜沙子達は急いで席に着いた。



「……えーと、みんな…落ち着いて聞いてほしい」


担任は何かを決心したように、少し間を開けてから言った。

亜沙子はきっと塚本のことだろうと思った。


ごくり…と唾を飲み込む。


「…朝、塚本は体調不良だと報告したんだが……。
実は塚本はずっと眠ったままらしいんだ…」


担任がそう言った瞬間、教室内で驚きの声が上がる。

それもそのはず。

まだ知らない人だっているのだ。


亜沙子はついさっき聞いたので、落ち着いて担任の話に集中した。
7投稿者:伊藤カホ  投稿日:2017年05月07日(日)15時05分17秒

担任の話はこうだ。


塚本は起こしても起きない。

心配した家族が病院に連れていっても原因は不明。


塚本はしばらく学校へは来れないのだ、と。


HRが終わり、亜沙子は真っ先に友達に塚本の話題を出した。


「…心配だね」

「何で起きないんだろうね…」


みんなの声には心配する他に、不安も感じ取れた。


「……ねえ、このまま塚本さんがさ、ずっと起きなかったらどうするんだろう…」


誰かが言った。


ずっと寝たまま。

亜沙子は塚本の立場が自分だったら…と考えるて、背筋が少し冷たくなるのを感じた。
8投稿者:伊藤カホ  投稿日:2017年05月07日(日)15時06分08秒
考えるて ×
考えると ○
9投稿者:伊藤カホ  投稿日:2017年05月07日(日)15時15分46秒


それから1日、2日、1週間と過ぎても、塚本は目覚めないままだった。


しばらくして、学校内で変な噂が流れ始めた。


「ねえねえ、うち、昨日変な夢見た…」

「マジ?どんな夢?」

「なんか…女の子の影?みたいなのが追いかけてきたの。
しかも、追いかけられた場所は学校でさ…。
外には出られなかった」

「え!うちもその夢おとといくらいに見た!」

「え!マジで?」


その会話は、亜沙子の耳にも入ってきた。


数日がたち、とうとうクラスは夢の話で持ちきりになった。

どうやら、みんな変な夢を見始めているようだ。
10投稿者:伊藤カホ  投稿日:2017年05月07日(日)15時25分47秒


「どうしちゃったんだろうね…うちのクラス」


友達が心配そうな顔をして言った。

確かに、最近亜沙子のクラス、6年3組はおかしかった。

みんな口を開けば夢の話で、話題は絶えることがなかった。

まるで、夢以外の会話は禁止されているのかと思い込んでしまうほどだ。


「あのさぁ、最初に夢の話したの誰?」


クラスメートの男子が言った。

しん…と教室が静かになる。


「う、うちだけど…」


最初に夢の話をしたであろう女子が手を挙げた。


「は?じゃあお前のせいだな、みんなも変な夢を見るようになったのは」
11投稿者:伊藤カホ  投稿日:2017年05月07日(日)15時34分16秒

「え……?」


手を挙げた女子の顔がみるみる青ざめていく。

―どういうこと?


亜沙子には意味がわからなかった。


「とぼけるなよ。お前知ってたんだろ?
夢の話を聞いた人も同じ夢を見るってよぉ」

「えっ」


亜沙子は思わず声を漏らした。


―聞いた人も同じ夢を?


亜沙子はますます混乱してきた。

いや、その話を反射的に嘘だと決めつけていた。
12投稿者:伊藤カホ  投稿日:2017年05月08日(月)22時03分56秒

―そんなバカな。そんなはずあるわけない。


亜沙子は嘘だと思った。嘘であってほしかった。


「……なーんだ。バレちゃった?」


責められた女子がニヤリと不適な笑みを浮かべて言った。

途端、亜沙子は何かが崩れ落ちたのを感じた。


「お前ふざけんじゃ……!」

「仕方ない!仕方ないじゃん!だってうち、塚本さんのようにずっと寝たきりは嫌だったんだから!」


女子は唾を飛ばしながら男子に反発した。


―塚本さんのようになる?


ますますわからなくなった。


―塚本さんはやっぱり悪夢を見て起きなくなったってこと?
13投稿者:伊藤カホ  投稿日:2017年05月08日(月)22時16分36秒


「…は?どういうことだよ」


男子は亜沙子の気持ちを代弁するかのように言った。


女子はしばらく唇を噛み締める。


「おい、何とか言えよ!」


男子が罵声をあげる。

女子はようやく口を開いた。


「…塚本さんは、悪夢を見たんだよ。
うち、塚本さんと友達だったから、塚本さんのお母さんに聞いたの。
そしたらね、原因、やっとわかったんだって。
やっぱり夢が悪いんだって。
塚本さんのお母さんは、夢の中を覗ける機械みたいなのを見せてくれた。
塚本さんのおじいちゃんが発明家だから…。
うち、見たの。塚本さんの夢の中を。
そしたら……何か大きな影に追いかけられてた。
その後だったの。うちも同じ夢を見るようになったのは…。
塚本さんのお母さんは同じ夢を見ることを知ったときは謝ってくれた。
でも、うちも寝たきりはイヤで……だから……」
14投稿者:伊藤カホ  投稿日:2017年05月08日(月)22時27分59秒

「……だからみんなに広めたって言うのかよ?」


男子は怒りを押し殺したような声で聞く。


「…ごめん。みんな本当にごめん……。ごめんなさい……」


否定しないと言うことは、女子はそのつもりだったと言うことになる。

亜沙子は頭が真っ白になった。


その時だった。

女子の親友であろうロングヘアーの子が膝からがくりと床についた。


「ちょっとおい、大丈夫かよ」


男子が言っても、ロングヘアーの子は答えなかった。

まるで世界が終わるかのような表情をしている。


「…あたし……あたしだ…。次に夢を見るのはあたしだ…」


ロングヘアーの子はぶるぶると震え始めた。
15投稿者:伊藤カホ  投稿日:2017年05月08日(月)22時43分55秒


「何…言ってんのよ。次が命子(めいこ)なんてわからないじゃん」


命子と呼ばれたロングヘアーの子の友達は本人を慰める。

しかしつもりでも、声が震えていてあまり効いていないなと亜沙子は思った。

命子は、慰めてきた友達を睨みつけた。

睨みつけられた子はビクッとし、少しだけ震えている。


「…バカだね。何で?よくそんな事言えるね。
菜代(なしろ)さあ、あたしの立場になってみなよ?
人の気持ちを想像できないのが、あんたの悪いとこよね」


睨みつけられた子は菜代と言った。


「…は!?何よ!人がせっかく…!」

「ダメ。無理なの。次はあたしなの…。
だってあたし…最初にこの子から話聞いたんだもん」


そう呟き、命子は最初に話した親友を指さした。
16投稿者:伊藤カホ  投稿日:2017年05月08日(月)22時54分12秒

指をさされた女子の顔はみるみるうちに青ざめていく。


「ごめん命子……ほんとにごめん……」

「何がごめんだよ!本当に申し訳ないって思ってんの!?思ってないだろ!
自分が一番大事なくせに!」


命子に厳しい言葉を浴びせられ、とうとう女子は泣いてしまった。


「…はあ!?あたしのせい!?だったらコイツのほうが悪いでしょ!」


命子は今度は最初に話を始めた男子を指さす。


「ふざけんなよ!!なんで俺なんだよ!」

「だ、だって最初にこの子責めたのはあんたでしょ!?」

「責めてねーよ!事情を聞いただけだし」

「ウソ。あたしには責めてたようにしか見えなかったけど?」

「…んだと……!」


男子は拳を握りしめる。


悪夢がクラスを壊した。

亜沙子は突っ立ったままそう思った。
17投稿者:伊藤カホ  投稿日:2017年05月08日(月)23時11分33秒
みるみるうちに青ざめていく ×
さっきよりも青くなった ○
18投稿者:伊藤カホ  投稿日:2017年05月11日(木)23時23分01秒
しかしつもりでも ×
でも ○
19投稿者:伊藤カホ  投稿日:2017年05月11日(木)23時34分01秒


「…やめてよ!!」


泣いていた女子が叫んだ。

その声の大きさで、辺りは一気に静かになる。


「ふたりは悪くない…!悪いのは全部うちだから……。
お願い…。ケンカだけはやめて…」


俯いたまま女子は言った。

そして、また泣いた。


「ごめんなさい…ごめんなさい…」


泣きながら、女子はその言葉を何度も繰り返していた。


教室は、しばらく静かなままだった。
20投稿者:伊藤カホ  投稿日:2017年05月11日(木)23時49分27秒



「…本当だったんだね、夢の話…」


帰り道、友達のひとりである翠(みどり)が呟いた。


「……そうだね」


亜沙子は、そう返事をするしかなかった。


亜沙子自身も、夢の話が本当だということに驚いていた。

正直、その話が信じられなくて、今でも嘘だと思っている。


だけど、もしそれが本当なら、亜沙子もいつか悪夢を見るときが来るのかもしれないのだ。

―それだけは絶対嫌だ。


亜沙子は拳をぎゅっと握りしめた。
21投稿者:伊藤カホ  投稿日:2017年05月12日(金)00時13分43秒


「私たち、大丈夫なのかな…」


二人目の友達の蘭香(らんか)が心配そうに言う。


その一言で、グループ内の雰囲気はだんだん暗くなる。


「大丈夫、でしょ…」


亜沙子は何とかその雰囲気を壊そうと試みたものの、微妙な喋りになってしまい、失敗した。


「亜沙子はいいよね。足が速くて」


翠が羨ましそうに言った。

その羨ましさの中には嫉妬も混ざっていると亜沙子は感じた。


「何よ突然…」


亜沙子は苦笑いをした。


「だって!足が速ければ女の子に捕まる心配なんてしなくていいじゃない!」


翠の目には涙が溜まっていた。

真っ赤になっていて、涙がこぼれるのを我慢しているかのようだった。


「ずるいよ……そんなの……」

「翠……」


亜沙子は何も言えなくなってしまった。

唯一できることは、翠の背中をさすってやることだけだった。
22投稿者:伊藤カホ  投稿日:2017年05月19日(金)12時53分36秒


「ねえ、今日どうする?」


蘭香が尋ねる。


「どうするって、何が?」


翠が涙目のまま聞き返す。


「だって、このまま帰っても暇じゃない?」


そう言い、蘭香はため息をつく。


確かに、このまま帰っても何もない。

もしかしたら、夢の話を思い出してしまうだろう。


「あー、ごめん。わたし弟の世話手伝ってあげなきゃダメなんだ」


グループ内の光恵が申し訳なさそうに手を合わせた。


「ごめん、私はピアノの稽古があるから無理」


同じくグループ内の諒子も目線をななめ下に下げて言った。
23投稿者:伊藤カホ  投稿日:2017年05月19日(金)13時01分15秒


「オッケー」


残ったのは亜沙子、蘭香、翠の3人。

あとのふたりとは別れ、行くあてもなく周りをぶらぶらと歩いていた。


「…どこ行く?」


と翠。


「どこでもいいよ」


と蘭香。


「それじゃわかんないよー」


「じゃ、近くでお菓子買って食べようよ」


亜沙子はそう提案する。


いいね、とふたりは賛成をしてくれたので、早速駄菓子屋に行ってお菓子を買うことにした。
24投稿者:伊藤カホ  投稿日:2017年05月19日(金)23時31分48秒

駄菓子屋に着くまで、亜沙子たちは無言だった。

亜沙子は場の雰囲気を明るくするために何か喋ろうかと考えたが、話す内容がなかなか思い付かなかった。

結局何も話さないまま駄菓子屋に着いてしまった。


芸能人のニュースでも話せば良かった、と亜沙子は今さらながら話題を思い付いた。

そしてもっと早く思い付けば…と後悔した。


駄菓子屋には、割烹着を着た老婆が勤めている。

老婆は70代くらいで、背が低く背中は丸まっている。

いつもニコニコしており、近所の評判も良い。


老婆は亜沙子たちに気付くと、「いらっしゃい」と優しさ溢れる声をかけてくれた。
25投稿者:伊藤カホ  投稿日:2017年05月19日(金)23時44分39秒


「こんにちは」


今まで沈んでいた気分も、老婆を見ると少しだけ和らいだ。


「何買うー?」


亜沙子はやっと明るい声を出すことができ、よかったと満足した。

だが、ふたりの反応は期待を裏切るものとなる。


「別に何でもいい。正直食欲ないし」


翠は突き放すように冷たく言った。


自分が賛成したくせに、そんな言い方はないだろうと、亜沙子は苛立ちを覚えた。

しかし、それで反撃すれば場の雰囲気は更に最悪なものとなるだろう。


亜沙子は明るく振る舞うことを諦めない。

諦めるものかと思った。

26投稿者:伊藤カホ  投稿日:2017年05月19日(金)23時57分03秒


「えー、何でよー。せっかく来たんだから何か買おうよ」


亜沙子は翠の背中をポンと叩いた。

笑顔を絶やさないことを意識していた。


しかし、翠の表情はよくならず、逆にどんどん険しくなっていく。

その表情の変化に気付き、亜沙子の笑顔は引きつった。


どうしようと焦り始めた。

同時に、翠への苛立ちも増していく。


―こんだけあんたに気使ってやってんのに、その態度はないじゃない。


亜沙子はジロリと翠の横顔を睨む。


「…いいよね、亜沙子は」

「は?」


翠が突然言い出したので、思わず聞き返してしまった。

慌てて口を押さえたが、もう遅い。


今度は翠が亜沙子を睨んだ。
27投稿者:伊藤カホ  投稿日:2017年07月14日(金)01時21分29秒

ダメだ、またケンカになってしまう。

バカ、私のバカ。


亜沙子は自分を抑えようとはしたものの、翠への苛立ちは治まらないままだった。

だけど、もう教室にいたときみたいな争いは起こってほしくなかった。

ケンカばかりじゃ、ますます自分が不安になっていくだけだ。


「足が速いなんて、どんだけ恵まれてんの」


亜沙子の気持ちを無視するかのように、翠は口を開いた。

その言葉はどこか皮肉が混ざっているようで、亜沙子は頭にカッと血が昇るのを覚えた。

さっきの翠への苛立ちがさらに増していく。

28投稿者:伊藤カホ  投稿日:2017年07月14日(金)01時36分34秒

「だからさ、自分が足が速いからって油断してるでしょ。でもムダだよ。その夢の鬼はあんたよりずっとずっと足が速いんだから。
ううん、速くなってる。確実に……」


翠はさらに続ける。


「ねえ、亜沙子。鬼に捕まりたくないなら、夢を見るのは今のうちだよ?
…あっ、そっか。あんた足速いし、夢を見るのはいつでもいいか。
だけどさ、だけどさ、油断しすぎて捕まっちゃうかもよ〜?」


「……翠、やめ…」


「あ、そうそう!そういえばあんた、この前生まれてから一度も鬼に捕まったことない、みたいなこと言ってたよね?
初めて捕まるのが本物の鬼になんて、めっちゃ恐ろし〜」


「翠ってば…」


蘭香が止めようとするが、翠は全く聞かない。


「キャハハハハハハ!アハハハハハハ!
おっかしー!ヒャハハハハハハ」


それどころか、大笑いをし始めた。

老婆はびっくりした顔で翠を見ていた。


パシッ……


冷たい音が響く。
29投稿者:伊藤カホ  投稿日:2017年07月17日(月)16時22分07秒


「……あ」


それは、亜沙子が翠をビンタした音だった。

無意識のうちにやってしまったので、亜沙子は焦る。


「ご、ごめん……。私、そんなつもりじゃ…」

「痛ってえな!!何すんだよっ!!」

「あ…ごめん、本当にごめん…!私、本心でやったわけじゃないの…」


亜沙子は嘘をついた。

無意識のうちに叩くなんて、相当相手にイラ立たなければできないと亜沙子自身も思った。

バカな嘘をついたと、亜沙子はすぐに後悔した。


「はぁ!?本心じゃないって、そんなのあるわけねーだろ!!
適当なこと言うなよクズが!!」


亜沙子の恐れていた通り、翠は怒鳴った。


「……ああそうか。そーかそーか。ははっ。こうすればいいんだ」


目を見開き、翠は声を上げて笑い始める。

30投稿者:伊藤カホ  投稿日:2017年07月17日(月)16時33分11秒


今まで一度も見せたことのない狂った表情に、亜沙子と蘭香は震えた。


「えーと、えーと……」


翠はランドセルを下ろし、狂った表情のまま必死で何かを探し始める。


「…こっちにはない」


そう言うと、別の部分のチャックを開ける。


ふたりは怖くて動けなかった。

止めたら暴力を振るわれるかもしれないと思ったからだ。

それほど今、翠は危険な状態だった。


亜沙子は嫌な予感がした。


31投稿者:伊藤アホ  投稿日:2017年07月27日(木)22時27分40秒
すんませんネタ切れなので書けません!!
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